少女が勢い良く走りこんでくる その後ろを保護者のように見守りながら女 少女・包みからオルゴールを取り出し 開く 女・少女の後ろから抱き着こうとする 少女・振り向き 女に微笑みかける 女・不意をつかれて動きを止め 少女に不器用に微笑み返す 少女の注意が再びオルゴールに注がれる 女・また少女に抱きつこうとする 少女・オルゴールの蓋をバタンと閉める 静寂 女 どうしたのかな? 少女 ・・・・・ 女 眠たいの?お昼寝する? 少女 お昼寝にはまだ早いよ 女 そ そうだね 少女 ・・・・ 女 (ウサギのヌイグルミを出して)ほら ウサギちゃんだよ ピョン 少女 ・・・・ 女 あ あんまり興味なかった? 少女 ・・・・ 女 あ じゃぁ・・・おままごと・・・おままごとしようか 少女 ・・・・ 女 おままごとも 嫌い? 少女 ・・・・ 女 まいったなぁ それじゃぁ 何しようか ねぇ 何がしたい? 少女 私お母さん役ね 女 え? 少女 私お母さん おままごと 女 それじゃぁ おばちゃんは 何をすればいいかな 少女 誘拐・・・ 女 え? 少女 子供が 誘拐された お母さんね 私 女 ・・・・・ 少女 おままごと 女 あ あぁ おままごと 最近はそういうのが流行ってるんだ 少女 娘が帰ってこないんです この頃変な人が多いから 心配だわ 女 そ そうだね おばちゃん お父さんになればいいのかな? 少女 もしかして 攫われたんじゃないかしら 女 まさか ご飯の時間になったら帰ってくるよ 少女 あの子 人懐っこいから 誰にでもほいほい着いていっちゃうし 女 心配要らないよ 危なそうな人なら いくらあの子でも分かるでしょ 少女 人のよさそうな顔をして近づいてくるから おばちゃん 女 ・・・・ 少女 お母さんのお友達だよ とか言って近づいて・・・ 女 何言ってるのかな? おばちゃん 本当に怪しい人じゃないからね お母さんに頼まれてあなたの面倒見て お父さんが突然出張になって 少女 お母さん急用が出来て帰りが遅くなりそうだから って言われて 家に連れ込まれて その人も最初はそんなつもりじゃなかったのかも知れないけど あの子 ねぇ あんな子でしょ 生意気な事言って 今頃・・・ 少女・ウサギのヌイグルミの首をハサミでちょん切ろうとする 女 止めなさい!!! 女・少女からハサミとヌイグルミを奪い取る 少女 ・・・おままごと・・・ 女 こんなのは おままごとでもなんでもありません!! 少女・女を見つめる 女 あ ごめんね 怒鳴ったりして でも ハサミ 危ないから・・・ 少女 ・・・・・・ 女 ハサミ 危ないから ね お願いだから そんな目で見ないで お願い 少女 ・・・・ 女 ・・・どうして黙ってるの?怒ってるの? 少女 ・・・・ 女 おばちゃん 謝るから ねぇ 何か言ってよ 少女 それじゃぁ お話して 女 お話?いいよ どんなお話がいいかな そうだ ちょっと待っててね 絵本が・・・ 少女 今までで一番恥ずかしかった話 女 ・・・・・は? 少女 おばちゃんが 生まれてから今まで 生きてきた中で一番 恥ずかしい思いをした事を 話して 女 恥ずかしかった話 ねぇ おばちゃんが あなた位の頃にね 生まれて初めてラブレターを書いたの 相手は同じクラスの男の子で 放課後そっとその子の机の中に入れておいたのね そうしたら次の日 その子 他の男子からラブレター ラブレターってはやし立てられて その子は目いっぱいに涙をためてて 掲示板を見たら私が書いたラブレターが張り出されていたの 少女 ・・・・・ 女 はい これでいいかな あまり面白くなかったでしょ ごめんね 少女 ・・・・ 女 次はそっちのお話聞きたいなぁ どんな事でもいいから 少女 おばちゃん 女 なぁに? 少女 だから おばちゃんが 生まれてから今まで 生きてきた中で一番 恥ずかしい思いをした事を 話して 女 だから それはさっき・・・ 少女・立ち上がり 窓を開ける 少女 もし私がここから大声出したら おばちゃん困ったことになるよね 女 馬鹿なことしないの 少女 ・・・・・・ 女 近所迷惑でしょ 少女 ・・・ 女 ・・・・ね? 少女・突然はじけたように笑い出す 少し間をおいて 女も不器用に笑う 女 大人をからかうもんじゃありません 少女・まだ笑っている 女 どうしたの? 少女・まだ笑っている 女 ねぇ どうしたの? 少女・まだ笑っている 女 どうしたのってば 止めてよ 少女・まだ笑ってる 女 止めて 止めてって言ってるのが聞こえないの!? 静寂 少女 おばちゃん どうしてそんな顔してるの? 女 へ? 少女 変なの 女 そ そう? 少女 心配しなくても 私はどこにも行かないよ 女 ・・・・ 少女 だからどうしてそんな顔してるの? ねぇ 何か言ってよ 女 ・・・喉渇いたでしょ オレンジジュースで良かったかな? 少女 パイナップル 女 ・・・ごめんね 今オレンジジュースしかなくて 少女 パイナップル 女 だから パイナップルなくて ごめんね オレンジジュースしか 少女 じゃぁいいよ オレンジで 女 そう ごめんね 少女 これ オレンジじゃなくてグレープフルーツだよ 女 あ おばちゃん間違えちゃった あの でも オレンジもグレープ・・・も同じミカンじゃない いいよね 少女 ・・・・ 女 ごめん 買ってくる 女・去りかける その後ろから少女・抱きつく 少女 フフフ あせっちゃって おばちゃん 面白い 女 (生唾を飲み込む) 少女 (抱きついたまま)オレンジもグレープフルーツも同じミカンじゃない ねぇ 女 **ちゃん(言葉にならない) 放してくれないかな おばちゃん 苦しいよ 少女 ・・・・・(無言のまま女の首を絞める) 女 !苦しいよ ねぇ 少女 笑顔の綺麗な子がいたの でもある日を境にすっかり笑わなくなったの 女 ねぇ 少女 どうしたの?って聞いても何も教えてくれないの あんなに笑顔の綺麗な子だったのに いつもびくびくしてて 暗い子になっちゃったの 女 ・・・・ 少女 おばちゃん聞いてる? だからね クラスでお泊り会があった晩 その子にこう聞いてみたの 何て聞いたと思う? 女 ・・・・ 少女 (女の耳に囁くように) 今までで一番恥ずかしかった事はなぁに? 女・少女を振り払う 女 あんた いい加減にしなさいよ! 少女 はい ままごと終わり 次何して遊ぼうか? 女 え? 少女 ねぇ 何して遊ぶ? 女 ・・・・ 少女 どうしてそんな顔してるの?おばちゃん面白い 女 そ そうかな 少女 どうしたの?おばちゃん 女 何でもないよ そうだ もうすぐお昼寝の時間じゃないかな? 少女 お昼寝にはまだ早いよ 女 そう? 少女 ねぇ 面白いことしようよ 女 うん そうだね ・・・何しようか? 少女・ゴロンと横になり 紙に何か絵を描き始める 女 トランプあるから ババ抜きとか 少女 だから 面白いこと 女 神経衰弱 少女 面白いこと 女 大貧民って知ってる? 少女 面白いことしようってば 女 ごめん 今の子って何して遊ぶのかな?おばちゃん よく分からないや 少女 ・・・・ 女 何 描いてるの?お絵かき 好きなんだ 女・少女の背後から近寄り絵を覗くふりして 抱きつく 少女・何食わぬ顔で絵を描き続ける 女 いい匂い 少女 ・・・・・ 女 何もしなくても綺麗な肌 いいなぁ 少女 おばちゃん 女 ん? 少女 重いよ 女・少女の体を仰向けにさせ ブラウスのボタンを一つづつ外し始める 女 ちょっとだけ我慢しててね 大丈夫 すぐに良くなるからね 少女 ・・・・・ 女 今からおばちゃんと面白いことしようね 少女 ・・・・・ 女 どうしたの?泣いてるの? 少女 ・・・・・ 女 脅えなくていいから ね?その顔を見せて 少女・笑ってる 女 どうして笑ってるの? 少女・笑ってる 女 ねぇ どうして笑ってるの? 少女・笑ってる 女 そんなにおばちゃん可笑しいかな? 少女・笑ってる 女 ねぇ 少女・笑ってる 女 そんなにおばちゃん可笑しいかな? 少女・笑ってる 女 何か言いなさいよ 少女・笑ってる 女 ねぇ 何か言いなさいよ ねぇ 少女・笑ってる 女 何か言いなさいってば 女・少女の首を絞める それでも少女笑い続ける 女 お願いだから 何か言いなさいよ 女・首を絞める手に力を入れる 少女 (笑いながら)おばちゃん どうしてそんな顔してるの? 女・呆然として少女から手を放す 少女の笑い声が悪夢のように響き渡る 女 笑うのを止めなさい 少女・笑ってる 女 笑うのを止めなさい! 女・馬乗りになった状態から少女の頬を叩く 静寂 女 あ ごめんね 少女・女を押しのけ立ち上がる 女 ごめんね おばちゃん 手を上げるつもりは無かったんだ ついかっとなって 少女・何も言わずにオルゴールの蓋を開ける 女 ごめんね 痛かったでしょ かわいそうに ひどいことしたね 女・後ろから少女の頬を撫でる 少女・何も言わずに ただオルゴールの音色に聞き入っている まるで少女には女の存在など無いように 女 何か言ってよ おばちゃんが悪かったから ね? 少女 おばちゃん 女 なに? 少女 まだおばちゃんの話聞いてないよ 女 え? 少女 だから おばちゃんが今までで一番恥ずかしかった話 してよ 女 ・・・・ 少女 ねぇ 女 ・・・・ 少女 どうして黙ってるの?早くお話してよ 女 それは だから 少女 だから なに? 女 あの あのね 少女 ん?聞こえないよ 女 だから あの 私・・・おばちゃんが・・・ 少女 なにビクビクしてるの? 女 おばちゃんがね あなた位のときにね 少女 笑顔が綺麗な子だったの 女 あのね あの ラブレターを あの 少女 まるで昔の私を見ているみたいだったわ 女 好きな 男の子に あの・・・ 少女 だから お母さんの知り合いを装って声をかけたの 女 あの それで 次の日 あのね 少女 何も疑わずにホイホイ着いて来たわ 女 あの 掲示板に じゃ無くて 泣いてて あの 少女・机に女を押し倒す 女 あの それでね あの 少女 それから どうなったの? 女 だって 優しそうだったから 少女 それで? 女 お父さんが出張で お母さんが帰りが遅くなるっていうから・・・・ 少女 それで? 女 あの オルゴール 買ってもらって・・・ 少女 それで? 女 それから・・・あの・・・家に連れ込まれて・・・ 少女 それで? 女 ・・・・・ 少女 ・・・どうしたの?それからどうしたの? 女 ・・・・ 少女 何か言ってよ どうしてビクビクしてるの? 女 ・・・・ 少女 女 ・・・・ごめんなさい 女 ごめんなさい 少女 どうしたの? 女 ごめんなさい 少女 どうして謝るの? 女 ごめんなさい 少女 誰に謝ってるの? 女 ごめんなさい 少女 ん? 女 ごめんなさい 少女・手を伸ばす 女・身をすくめる 少女・オルゴールの蓋をバタンと閉じる 静寂 少女 はい おままごと終わり 女 へ? 少女 それじゃぁ 私帰らなきゃ 宿題いっぱい出てるんだ 算数 女 ・・・・ 少女 今日は遊んでくれてありがとう 楽しかったよ 女 ・・・・ 少女 また遊んでね あ もうこんな時間だ ママに怒られちゃう 女 ・・・・ 少女 あ あとそれから 女 何? 少女 お昼寝にはまだ早いよ おばちゃん 少女・去る 後にはあどけない少女の様な顔をした女が 呆然と 虚空を見つめている |
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